2007.03.29 新 欲しいAV/PC両用液晶モニタ/番外編 モニタの色域.その3

カテゴリ[ Mac ] and [ DTV ] and [ 物欲 ] and [ AV/PC両用LCD ]

このネタ、続いておりますが、今日で終了です。

miyahan.com | 液晶ディスプレイとカラーマネージメント P.4からお越しのみなさま、こんにちわ。

[ブログ] MacDTV.com : Mac.una Matata!!「新 欲しいAV/PC両用液晶モニタ/番外編 モニタの色域.その3」
色管理に無知な Windowsユーザーの友人とのエピソードと共に、広色域ディスプレイの副作用(?)について解説しています。

とご紹介頂いておりますが、以下の記事

2007.03.23 新 欲しいAV/PC両用液晶モニタ/番外編 モニタの色域.その1
2007.03.26 新 欲しいAV/PC両用液晶モニタ/番外編 モニタの色域.その2
2007.03.29 新 欲しいAV/PC両用液晶モニタ/番外編 モニタの色域.その3 (←この記事)

は、業務用ビデオモニタとしての色域の話題をまとめることが、主テーマです。すなわち、
例えば、PCモニタに関して(DTP用途の色管理であるとか、Winodwsでどうのこうのを)ことさらに言及する意図はありません。
あるいは、家庭用AVモニタとしての用途にも、あまり興味はありません(ゲームマニアの方々が求めるAVモニタとは、方向性が違っているのも当然だと思います)。

以上のことを念頭に置いて頂いて、もし、このエントリーがお役に立ちましたら...。

● ブラウン管時代のまとめ

ブラウン管時代は、広い色域を表示できる性能がなかったため、NTSC比72%程度の「狭い」色域を設定せざるを得なかった。

「狭い色域」とは、ビデオ・TVの世界では、SDビデオの場合EBU 100%を、HDビデオではITU-R BT.709を指す。
PCモニタの世界では、sRGBを指す。
両者の関係は、EBU 100%(NTSC 72%)≒sRGB、ITU-R BT.709=sRGB

ブラウン管時代は、作り手側(ブラウン管のビデオモニタ)、視聴者側(家庭用ブラウン管テレビ)ともEBU 100%の色域だったので、不整合は起こらなかった。

● 液晶時代のまとめ

液晶モニタの進歩により、ブラウン管まで不可能だった「広い色域」を表示できる性能を手にいれつつある。

「広い色域」とは、TVでは、NTSC 100%、PCモニタではAdobe RGBを指す。
どちらもほぼ同じ色域である。

液晶モニタの登場・普及により、ブラウン管時代には起こらなかった「不整合」が生じている。
 

この「不整合」を説明するために書き始めたこのシリーズですが、やっとこさそこまで到達しました。
二つの例を。


「いやあ、液晶モニタを買い替えたんだけどさ。デジカメの画像があざやかで、感動的にきれい」と言われたことがあります。もちろん、Windowsユーザ。

うーむ、使う液晶モニタによって、同じ画像の見え方が違うんでは、さて、編集の時にどうやればいいの??。カラーマネージメントって知ってる??。液晶モニタのプロファイルとか、キャリブレーションとか。

(ColorSyncが働いている)Macユーザからすれば、なんだかなあという話し(しかし、Windowsには良くある話し)なのですが、この例、「液晶モニタの登場・普及により、ブラウン管時代には起こらなかった「不整合」が生じている」という一例なのです。

例えば赤(R=255, G,B=0)という色を描画しろ、とMacからブラウン管モニタや液晶モニタに信号を送ったとき、狭い色域のブラウン管モニタはくすんだ赤を、広い色域を表示可能な液晶モニタの場合、よりあざやかな赤を表示します。

問題は、あざやかだからといって液晶モニタの方が「優れている」訳ではないこと。

最も「優れている」のは、素材に忠実なこと、言い換えると、作り手の意図する色が再現されること。
例えば、デジカメで撮影したものは、そのままモニタ上に映し出されることです。
あるいは、デジカメ画像を補整・編集した場合には、編集者が調整・制作した画像の色味がそのまま、別のモニタでも再現されることです。
ある特定の液晶モニタだけで表現される、そんなあざやかな色の画像は、決して優れている訳ではありません。

これまでは、ブラウン管を前提とした狭い色域だけをPCは扱っていたので、「不整合」は顕在化しませんでしたが、今後は、不整合を解決するためのカラーマネージメントが、ハイエンドだけでなく一般PC用途でもクローズアップされることでしょう。

注)Macユーザにとっては、Mac OS、Mac OS XにカラーマネージメントシステムであるColorSyncが組み込まれているので、通常、問題になることはありません。また、Adobe Products内で使用する分にはWindows環境でも問題になりません。


同じことは、家庭用液晶TVでも起きています。

「うちの液晶TVは、NTSC比92%というだけあって、あざやかだよね」

をいをい、とツッコミを入れる箇所はもうお判りですね。
いくら、表示能力の高い液晶TVでも、現状の「ビデオソース」は、NTSC比72%以内の色域しか持っていないのです。放送にしろ、DVD-Videoなどの製品にしろ、制作現場では、NTSC 72%(EBU、ITU-R BT.709(つまりsRGB))しか表示できないビデオモニタを使用して、編集・色合わせをしているのですから。

つまり、NTSC比72%のモニタで制作されている、現状の「ビデオソース」を見るには、「NTSC比92%が表示可能な家庭用液晶TV」は宝の持ち腐れ。そればかりか、ビデオ制作者の意図する「色」とは違った色を表示してしまう弊害すらあります。

その弊害を避けるために、広い色域を謳う液晶TVの中には、ネイティブモード(その液晶パネルが表示しうる色域(例えばNTSC比92%)を使って表示するモード)の他に、NTSC72%モードを搭載するものもあります。


いやあ、あいかわらず、話しが長くなりました。そんなわけで、

液晶TVを購入する際には、広色域だからといって優れているわけではない。
「他の機能・性能が同じで、色域の広さで価格が異なる」*)といったシチュエーションでは、NTSC 72%の方を選べばよい。

*)実際には、「他の機能・性能が同じで、色域の広さで価格が異なる」なんてことはないでしょうが。パネルの色域の広さの違いは「液晶TVの世代」を意味しており、世代が新しくなるにつれ、要・不要問わずいろんな機能をてんこ盛り(笑)してくるのが、業界の常だから。

PCモニタに関しては、sRGBの狭い色域の液晶モニタをわざわざ入手するというのも、いまさらどうかと(よほどのこだわりでもない限り)。ならば、広色域の液晶PCモニタを使用する際には、カラーマネージメントをお忘れなく。

といった辺りで締めるとして、
さて、わたしの求めている、AV/PC両用モニタの場合、さて、どんな色域を液晶モニタを狙えばよいのか。考えどころで、悩ましいところです。

2007.03.23 新 欲しいAV/PC両用液晶モニタ/番外編 モニタの色域.その1
2007.03.26 新 欲しいAV/PC両用液晶モニタ/番外編 モニタの色域.その2
2007.03.29 新 欲しいAV/PC両用液晶モニタ/番外編 モニタの色域.その3 (←この記事)

   
   

[ 前の日 ]   [ Mac.una Matata !!トップページ ]   [ 次の日 ]

この記事のURL: http://www.macdtv.com/Macunamatata/Articles/20070329/index.html