2007.03.23 新 欲しいAV/PC両用液晶モニタ/番外編 モニタの色域.その1

カテゴリ[ Mac ] and [ DTV ] and [ 物欲 ] and [ AV/PC両用LCD ]

ずいぶん続いている[ 新 欲しいAV/PC両用液晶モニタ ]ネタですが、今回は番外編。

最近、家庭用液晶TVなどで「NTSC比92%」等と広色域をうたう製品が登場してます。液晶パネルカラーフィルタの透過率向上、バックライトの高輝度化等により、より明るい色が表現できるようになったことが理由です。

「NTSCの92%が表現できるようになったのか。(ってことは、これまでは92%よりももっと少なかった訳だよね。)なんだかよくわからないけどすごそう」

と単純に思わせてしまう「広告」ってうまいですね。

でもね、ビデオの制作現場では、現在も、「NTSC比にして72%しか表現できないようなビデオモニタ」を用いて制作されているのですよ。だから、「NTSC比92%が表示可能な家庭用液晶TV」を購入しても、せっかくの広い色域表示性能も、宝の持ち腐れになるのですね。なにしろ、現状の「ビデオソース」は、放送にしろ、DVD-Videoなどの製品にしろ、NTSC比72%以内の色域しか持っていないのですから。

...といった辺りを、このシリーズではお送りします。

関連記事

2007.03.23 新 欲しいAV/PC両用液晶モニタ/番外編 モニタの色域.その1 (←この記事)
2007.03.26 新 欲しいAV/PC両用液晶モニタ/番外編 モニタの色域.その2
2007.03.29 新 欲しいAV/PC両用液晶モニタ/番外編 モニタの色域.その3

● ブラウン管(CRT)時代

 (1) ビデオ・TVの世界

EBUとNTSCの色域の違い
内側の三角形がEBU, 外側の三角形がNTSC
ビデオ制作現場では、ブラウン管モニタが未だに主流です。液晶モニタには(相当改善されてはきたとはいえ)たしかに問題も多いので、画質が命の現場では積極的には使われていません。「保守的、と言われようとも使わない」という判断ももっともなことです。

さて、ブラウン管という表示デバイスは、元々NTSC全域を表示できる性能がありませんでした(特別の製品を除くと、今も無い)。ですから、ブラウン管しか存在しなかった当時は、NTSC比100%、というのもあくまで「理論値」の位置付けにすぎませんでした。
ですから、ないものねだりの「理論値」ではなく、ブラウン管で表示可能な「現実的な値」として、EBU 100%というものが標準と位置付けられました。EBU(要は、PALのこと)の色域で100%は、NTSC 72%に相当します。

CIE1931標準表色系における色度図を使って説明すると、右図のような具合。要は、EBUの三角形(内側)の面積は、NTSCの三角形(外側)の面積の72%、ということです。

こんな風に、ビデオ・TVの世界では、ブラウン管で表示可能であるEBU 100%が標準とされてきました。現在もそうです。

この時代、制作現場でもブラウン管のビデオモニタ、視聴者が見る家庭用テレビもブラウン管だったので、作り手がEBU 100%で作って視聴者もEBU 100%のブラウン管で見る、と整合性が採れていました。

 (2) PCモニタの世界

sRBGの色域
一方、パソコンモニタの世界においても同様に、ブラウン管で表示可能な色域として、sRGBが設定されてました。色度図で描くと、右図です。

 (3) ビデオ・TVの世界と、PCモニタの世界との関係

両者の関係を見ますと、sRGBとEBUは、下図に示したとおり、ほぼ同じ色域。
ほぼ同じですが若干違っているのは、双方が独自に、それぞれの経緯で決まっていったからです。

それでも結果として双方がほぼ同じ色域に落ち着いた理由は、双方ともブラウン管で表示可能な色域を狙ってゆくと、結果としてほぼ同じ色域にならざるを得なかったからです。

sRGBとEBUの色域の違い

そんなこともあったので、後発のHDTV(ITU-R BT.709-3)では、あえて独自の色域を設定する必然性もなかったので、sRGBを採用することで全く同じ色域にすることにしました。

まとめ

ブラウン管時代は、広い色域を表示できる性能がなかったため、NTSC比72%程度の「狭い」色域を設定せざるを得なかった。

「狭い色域」とは、
ビデオ・TVの世界では、SDビデオの場合EBU 100%を、HDビデオではITU-R BT.709を指す。
PCモニタの世界では、sRGBを指す。

両者の関係は、EBU 100%(NTSC 72%)≒sRGB、ITU-R BT.709=sRGB

ブラウン管時代は、作り手側(ブラウン管のビデオモニタ)、視聴者側(家庭用ブラウン管テレビ)ともEBU 100%の色域だったので、不整合は起こらなかった。
 

例に長くなりました。続きます。次回は、液晶モニタ時代です。

関連記事

2007.03.23 新 欲しいAV/PC両用液晶モニタ/番外編 モニタの色域.その1 (←この記事)
2007.03.26 新 欲しいAV/PC両用液晶モニタ/番外編 モニタの色域.その2
2007.03.29 新 欲しいAV/PC両用液晶モニタ/番外編 モニタの色域.その3


 

[ 前の日 ]   [ Mac.una Matata !!トップページ ]   [ 次の日 ]

この記事のURL: http://www.macdtv.com/Macunamatata/Articles/20070323/index.html