ずいぶん続いている[ 新 欲しいAV/PC両用液晶モニタ ]ネタですが、今回は番外編。
最近、家庭用液晶TVなどで「NTSC比92%」等と広色域をうたう製品が登場してます。液晶パネルカラーフィルタの透過率向上、バックライトの高輝度化等により、より明るい色が表現できるようになったことが理由です。
「NTSCの92%が表現できるようになったのか。(ってことは、これまでは92%よりももっと少なかった訳だよね。)なんだかよくわからないけどすごそう」
と単純に思わせてしまう「広告」ってうまいですね。
でもね、ビデオの制作現場では、現在も、「NTSC比にして72%しか表現できないようなビデオモニタ」を用いて制作されているのですよ。だから、「NTSC比92%が表示可能な家庭用液晶TV」を購入しても、せっかくの広い色域表示性能も、宝の持ち腐れになるのですね。なにしろ、現状の「ビデオソース」は、放送にしろ、DVD-Videoなどの製品にしろ、NTSC比72%以内の色域しか持っていないのですから。
...といった辺りを、このシリーズではお送りします。
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2007.03.23 新
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欲しいAV/PC両用液晶モニタ/番外編 モニタの色域.その2
2007.03.29 新
欲しいAV/PC両用液晶モニタ/番外編 モニタの色域.その3
● ブラウン管(CRT)時代
(1) ビデオ・TVの世界
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さて、ブラウン管という表示デバイスは、元々NTSC全域を表示できる性能がありませんでした(特別の製品を除くと、今も無い)。ですから、ブラウン管しか存在しなかった当時は、NTSC比100%、というのもあくまで「理論値」の位置付けにすぎませんでした。
ですから、ないものねだりの「理論値」ではなく、ブラウン管で表示可能な「現実的な値」として、EBU
100%というものが標準と位置付けられました。EBU(要は、PALのこと)の色域で100%は、NTSC 72%に相当します。
CIE1931標準表色系における色度図を使って説明すると、右図のような具合。要は、EBUの三角形(内側)の面積は、NTSCの三角形(外側)の面積の72%、ということです。
こんな風に、ビデオ・TVの世界では、ブラウン管で表示可能であるEBU 100%が標準とされてきました。現在もそうです。
この時代、制作現場でもブラウン管のビデオモニタ、視聴者が見る家庭用テレビもブラウン管だったので、作り手がEBU 100%で作って視聴者もEBU 100%のブラウン管で見る、と整合性が採れていました。
(2) PCモニタの世界
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(3) ビデオ・TVの世界と、PCモニタの世界との関係
両者の関係を見ますと、sRGBとEBUは、下図に示したとおり、ほぼ同じ色域。
ほぼ同じですが若干違っているのは、双方が独自に、それぞれの経緯で決まっていったからです。
それでも結果として双方がほぼ同じ色域に落ち着いた理由は、双方ともブラウン管で表示可能な色域を狙ってゆくと、結果としてほぼ同じ色域にならざるを得なかったからです。
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そんなこともあったので、後発のHDTV(ITU-R BT.709-3)では、あえて独自の色域を設定する必然性もなかったので、sRGBを採用することで全く同じ色域にすることにしました。
まとめ
ブラウン管時代は、広い色域を表示できる性能がなかったため、NTSC比72%程度の「狭い」色域を設定せざるを得なかった。
「狭い色域」とは、
ビデオ・TVの世界では、SDビデオの場合EBU 100%を、HDビデオではITU-R BT.709を指す。
PCモニタの世界では、sRGBを指す。
両者の関係は、EBU 100%(NTSC 72%)≒sRGB、ITU-R BT.709=sRGB
ブラウン管時代は、作り手側(ブラウン管のビデオモニタ)、視聴者側(家庭用ブラウン管テレビ)ともEBU
100%の色域だったので、不整合は起こらなかった。
例に長くなりました。続きます。次回は、液晶モニタ時代です。
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