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HDV編集のやりにくさ |
2005.01.20初稿
2005.09.07改訂 |
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HDV編集を眺めてゆきます。
HDV編集のやりにくさ
それにしても、最初の話題が「編集のやりにくさ」とは、なんという見出しでしょうか(笑)。でも、DV編集に比べてHDV編集がやりにくい、というのは本当なんです。
原因を挙げると、以下のとおりです。
高精細ビデオともなると、、処理すべきデータが膨大であること
HDVで採用されている圧縮方式がMPEGであること
MPEGは、フレーム相関圧縮であること
MPEGの処理が重いこと
順に説明してゆきます。
HDTVともなると、処理すべきデータが膨大であること
HDV1080iでは、フレームサイズが1440×1080であることは説明しました。フレームサイズがDVの720×480から、1440×1080へと4.5倍に高精細化したということは、エフェクトを掛けたシーンでのレンダリング時にも、単純にいっても、DVのときの4.5倍量のデータを計算しないといけないということ、つまり、(仮にDV Codecを使用したとしても)DVのときの4.5倍の処理時間が掛かることを覚悟しなくてはならない、ということになります。
HDVで採用されている圧縮方式がMPEGであること
HDV1080iのフレームサイズ1440×1080を毎秒30コマの速度で再生してゆくと、(非圧縮4:4:4換算の場合)データ量は135MB/sになります。135MB/sという数値は、Fire800の最高速度100MB/s(800Mbps)、PowerMac G5の内蔵SATAの最高速度150MB/sと比較するとわかるとおり、現在のMacにとってもきわめて高い能力を要求します。PowerMac G5にしても、RAID(しかも、外付けのハードウェアRAID)といった特別な増設なしには達成不可能です。ですから、現実には、なんらかの「圧縮」が必要です。
こんな背景を考えると、「圧縮」自体には何も異論もありません。問題は、HDVで採用されている圧縮方式がMPEGであることにあります。なぜ、MPEGだと問題なのでしょうか。
MPEGは、前後のフレームとの相関を利用することで高圧縮率を達成するという優れた仕組みを持っています。HDVの場合でも、非圧縮時135MB/sのデータを約3.3MB/sにまでデータ量を削減することができます。
実際のところ、MPEGを採用しなかったら、高精細ビデオをDVテープに録画するということは不可能だったことでしょう。
しかし、これが、編集時には、二つの意味でアダになるのです。
MPEGは、フレーム相関圧縮であること
DVの場合は、DV Codecという圧縮方式を採用しています。
DV Codecの仕組みについては、MacDTV研究室のDV Codecの仕組みで解説しています。
DV Codecが編集に向いているというその訳は、フレーム内圧縮を採用していることにあります。つまり、あるフレームとあるフレームは独立しているので、あるフレームに掛けた処理は他のフレームには影響を与えない、ということです。あるフレームにエフェクトを掛けようが削除しようが、この処理は他のフレームには何ら影響を与えません。だから、単純なカット編集ならばレンダリングも必要ありませんし、あるシーンにエフェクトを掛ける場合もそのシーンのみでレンダリングすればいいだけで、そのシーン以外の箇所ではレンダリングする必要はありません。
ところが、フレーム相関圧縮を採用しているMPEGの場合、前後のフレームとの相関を利用することで高圧縮率を達成するという優れた仕組みが、編集の際には大きなアダになるのです。
たとえば、非常に単純なカット編集をしようとしても、フレーム単位ではできない。MPEGデータは、GOPという単位で構成されていますが、GOP単位でのカット編集なら比較的簡単に行えるものの、ある任意のフレームからカット、といった場合、そのGOP自体をレンダリングしなくてはならなくなります。単なるカット編集なのに。
余談ですが、HDVの場合、MPEGのGOP単位、という原理上、エラー耐性が非常に弱いのです。たとえば、テープ上のある箇所にほこりが付いてエラーが出る例を考えましょう。
DVの場合、最悪、ほこりのあるテープ上の箇所に相当する部分にだけ、ノイズが乗るだけです。TVでみているを、あるフレームのある部分にのみブロックノイズが入る、といった症状で済みます。
ところが、HDVの場合、フレーム相関圧縮を採用していますので、ノイズの影響は、一フレームだけでは済みません。最悪の場合、そのGOP全体(=0.5秒間)にノイズが乗ります。
一応、HDVの特徴のひとつに[強力なエラー圧縮能力]を挙げてあるように、データ欠落に対する耐性を強化してはいるのですが、でも、実際のところHDR-FX1でも、このようなエラーが出ると、そのGOP全体(=0.5秒間)が静止画になってしまいます(そのようなエラーが出たとき、HDR-FX1では静止画を表示するような仕様になっている)。
2005.07.26 ソニー、HDVをお使いのお客様へ重要なお知らせ@MacDTV.News
私なんぞは、辺境の地(暑い/寒い、ほこりっぽい)への撮影が多いもので、非常にびくびくしています。
MPEGの処理が重いこと
フレーム相関圧縮を利用することで高圧縮率を達成するというMPEGの仕組みは、編集時の処理の重さ、という皮肉な欠点の原因にもなります。
ただ単純に再生したい場合でも、MPEG伸張→表示を行わなければなりませんし、エフェクトを掛けたシーンについては、MPEG伸張→エフェクト処理→MPEG圧縮、という処理を行わないといけません。元々、HDTVフレームサイズのMPEG伸張くらいは、今のPowerMac G5であればなんとか追いつける(G4だときついでしょう)のですが、問題は、MPEG圧縮の方で、これは今のPowerMac G5を持ってしても、相当重い処理です。
DV編集の際には、編集過程で行うプレビューも、FireWire経由で接続したDVカメラ上でも再生可能(つまり、リアルタイムでエフェクト計算して、DVに変換してFireWireに流すという処理が可能)です。
しかし、HDV編集では、FireWire経由で接続したHDVカメラ上でのリアルタイムプレビュー再生など、望めるべくもありません。
以上、説明してきたように、
高精細ビデオともなると、処理すべきデータが膨大であること
HDVで採用されている圧縮方式がMPEGであること
MPEGは、フレーム相関圧縮であること
MPEGの処理が重いこと
といった点で、DV編集に比べてHDV編集はやりにくいのです。
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