MacDTV.comの記事[ 2006.05.12 HDデジタルビデオカメラ規格 AVCHD ]にて、
どれくらいのビットレートなら、どれくらいの画質が期待できるか、というと。
1080/60i(1440×1080サイズ)の場合、12MbpsのAVCHD と、HDV 1080/60i(ちなみに25Mbps)ならば、同じくらいの"画質"、
と、大胆にも予想してしまったもので、その根拠?!などを記しておきます。
始めにお断りしておきますが、
一般に画質というと、非常に広い意味に使われることばですが、ここでいう"画質"とは、わざと引用符でくくって"画質"と表記してますとおり、「オリジナルデータ(非圧縮時)を圧縮処理する際の劣化に関して」といった、ごく狭い意味で使っています。例えば、
ビットレート6Mbps、フレームサイズ720×480のSD
MPEG-2ビデオの"画質"は、
ビットレート27Mbps、フレームサイズ1440×1080のHD MPEG-2ビデオの"画質"と同じ
(圧縮方式はどちらも同じMPEG-2、違いはフレームサイズが大きくなったことだけ。フレームサイズの増加分だけビットレートもおなじ割合で大きくなっているのだから、同じ"画質"のはず
といったニュアンスで"画質"ということばを使ってます。
画質は、「オリジナルデータ(非圧縮時)を圧縮処理する際の劣化」(引用符付きの"画質")のみで決まるわけではありません。撮影時のカメラの性能にもよりますし、あるいは、圧縮以外の信号処理にも依存するでしょう。
あくまでも、この記事(および[
2006.05.12 HDデジタルビデオカメラ規格
AVCHD ])でいう"画質"とは、前述のような「狭い意味」で用いています。
では、とりあえず、AVCHD 12Mbpsというビットレートは、画質的にはどんなものなのか、というと。超おおざっぱにHDVと比較してみます。
デジタルビデオの信号処理量は、フレームサイズ、フレームレート、サンプリング方法、圧縮方法(Codec)、で決まります。HDV1080/60iでは、これらの設定値は下表のとおりの値に固定されています。一方、AVCHDでは、フレームサイズとビットレートは選択可能なので、まずは、HDV1080/60iと同等の設定値を入れてみます。
AVCHD 1080/60i | HDV1080/60i | |
設定:1440×1080, 12Mbs | ||
フレームサイズ | 1440×1080 | 1440×1080 |
フレームレート | 30fps,インターレース | 30fps,インターレース |
サンプリング方法 | 4:2:0サンプリング 8ビット量子化 |
4:2:0サンプリング 8ビット量子化 |
ビデオの圧縮方法 | H.264 | MPEG-2 |
ビットレート | 12Mbps | 25Mbps |
上表で、両者で異なっている点は、圧縮方法とビットレートだけです。
一般的に、H.264は、「MPEG-2の約2倍の圧縮効率」とされていますので、ビットレートの低減は、基本的にはH.264採用の成果といえましょう。早い話、HDV1080/60i(1440×1080。MPEG2、ビットレートは25Mbps)で、もし、圧縮方式をH.264に変更したとしたら、ビットレートは今の半分の12Mbps程度で済むはずです。この設定値のAVCHD
1080/60iは、"画質"的にはHDV1080/60i並、と予想でできます(うーむ、おおざっぱすぎるかなあ(笑))。
次に、AVCHD 1080/60iでも設定値を変えて、高"画質"化を図るとどうでしょうか。二つの考え方があります。
ひとつは、フレームサイズを1440×1080のままにして、圧縮率を下げてやるやりかた。このやりかただと、圧縮率を12/18=2/3に下げてやることが出来ます。圧縮率を下げてやることでHDV1080/60iよりも高画質、というイメージです。
二つ目は、フレームサイズを1920×1080(フルHDサイズ)に上げて高精細化をねらうやり方。フレームサイズが大きくなった分上表の条件よりもデータ量が1.33倍に増えます。その分を単純にビットレートをあげて吸収するとしても、12×1.333=16Mbpsですから、さらにスペック上限18Mbpsぎりきりまで活用して圧縮率を若干下げてやる(高画質化)ことも可能です。HDV1080/60iよりも高精細、というイメージです。
もう一例、720pで比較してみます。
現在、HDVの720p(ビットレート18Mbps)は720/30pしか存在してません。本命は、なんといっても(30pではなく)HDV720/60pであり、720pに力を入れている日本ビクターとしても720/60pを目指して開発しているはずです。
ところが、MPEG-2の2倍の圧縮効率を採用するAVCHDならば、HDV720/30pと同じビットレートである18Mbpsで、フレームレートを倍の60fpsに上げてやることが可能です。たとえば、下表のように。
AVCHD 720/60p | HDV720/30p | |
設定:18Mbs | ||
フレームサイズ | 1280×720 | 1280×720 |
フレームレート | 60fps,プログレッシブ | 30fps,プログレッシブ |
サンプリング方法 | 4:2:0サンプリング 8ビット量子化 |
4:2:0サンプリング 8ビット量子化 |
ビデオの圧縮方法 | H.264 | MPEG-2 |
ビットレート | 18Mbps | 18Mbps |
こんなかんじで、HDV720/30p(1280×720。MPEG2、ビットレート18Mbps)と、AVCHD720/60p(1280×720。H.264、ビットレート最高18Mbps)とを比較しますと、"画質"的にはほぼ同等(H.264採用による高圧縮効果をフレームレートの向上(30p→60p)に活用)、と値踏みできます。
このように、1080iと720pについて、HDVと比較することで、AVCHD規格の"画質"面での予想・可能性を考えてきましたが、HDVかそれ以上が期待できそうですね。
結局のところ、いまのところ、AVCHDがいまひとつに思えるのは、現状メディアの容量の制限(8cmDVDを使用する以上収録時間が短く、それだけにビットレートを上げるのはためらわれる)のせいなのです。
しかし、これは、次世代DVD(Blu-ray
Disc VideoやHD DVD-Video)が普及すれば解決します。ちなみに、Blu-ray Disc VideoでもHD DVD-Videoでも、ビデオフォーマットとして、AVCHDと同じMPEG-4
AVC/H.264が採用されていますから、基本的にAVCHDと次世代DVDは親和性が高いのです。
あるいは、松下のようにメモリもいいでしょうね。あるいは、HDVテープに収録するようなビデオカメラもいいかもしれない。もりろん、HDDビデオカメラも。
メディア容量の制限が解決すれば、ビデオフォーマットとしてのAVCHDは、標準でもHDV並みの"画質"が期待でき、しかも、さらなる高"画質"化の余地も秘めた規格だ、といえるでしょう。
この記事のURL: http://www.macdtv.com/Macunamatata/Articles/20060513/index.html