また、サブコードセクタといって、TimeCode情報や撮影日時データなどが記録される領域も確保されています。サブコードは、DVキャプチャー、DV書き出しの際のデバイス制御で威力を発揮します。
なお、図中、ITIセクタとは基準信号などを記録したエリアです。
LPモードとSPモード
録画時間が短い、その割に高価、というユーザの要望によって、DVテープにはLPモードが搭載されたDVカメラが増えてきました。SPモードにくらべ、LPモードでは1.5倍の録画が可能になっています。
VHSや8ミリビデオでのアナログテープでも、長時間録画モード(3倍)が搭載されていますが、この場合、明らかに画質が落ちます。この理由は、テープ速度を1/3に落とすことから、時間当たりの情報量も1/3になってしまうためです。
また、デジタルビデオの世界でも、DVD-Video作成時1枚のDVD-Rメディアに収録時間を延ばそうとすると、圧縮率を上げる(低ビットレートにする)ので、そこで画質が落ちます。家電HDDレコーダで
画質モードを変えると、圧縮率・ビットレートが変わるので、画質が変わることもよく知られています。
ところが、DVでのLPモードでは事情が違っています。基本的には、SPもLPも画質は同じ(データ量はおなじ)なのです。
テープの走行速度を2/3に落とし、テープ上への書き込み幅(トラック幅)も2/3に狭めることで、同じ長さのテープに1.5倍のデータを書き込み、収録時間を長くする、という仕組みです。幅10ミクロンで書き込まれているSPモードにくらべ、LPモードではその3分の2の幅である6.7ミクロンで書き込まれています。この仕組みですと、SPモードでもLPモードでも「圧縮率」は同じですから、画質は同じです。
ただし、LPモードでのデメリットもあります。
ひとつには、エラーの発生確率が若干増える恐れがあること。トラック幅が2/3になるので、データの冗長度が落ちることになります。そのためエラー耐性が弱くなります。この結果起こる症状としては、ブロック状のノイズがでやすくなるおそれがあります。
ふたつめには、自己録再しか保証されないこと。
自己録再とは、撮影したビデオカメラそのもので、再生すること。 つまり、録画時に使用した同一DVカメラでの再生しか保証されませんので、別のDVカメラではLPモードの再生は、うまく再生できないこともありえます。
結局のところ、LPモードでは、基本的には同等の画質を確保できるものの、そのぶんセーフティーマージンをけずってあるので、ノイズが出やすくなったり、再生互換性が低くなる、とまとめることができます。この特徴を理解した上で、LPモード使用の可否を判断して下さい。
DTVにおいては、あるDVカメラ製品では、LPモードだと取り込みがうまく行かない、などの症状が出ることもあるようです。また、個人的には、(お子さんの成長を記録するような「重要な撮影」の場合にテープをケチる(結果としてエラーのリスクが大きくなる)のは、馬鹿げているようにも思います。
これらの点を考慮してどちらのモードを使用するか考えて下さい。
なお、業務用途においては、家庭用DVよりもさらに信頼性が要求されますので、トラック幅を1.5倍に拡大して(その分録画時間は2/3になるが...)、信頼性を向上させるDVCAM方式(ソニー)やDVPRO方式(松下電器産業ほか)も存在しています。業務用途だと、それだけシビアなのですね。
DVのサウンドは...
DVのサウンドは、32kHz-12bits-2チャンネルステレオか、48kHz-16bits-1チャンネルステレオかのいずれかです。圧縮されていません。
規格上は、音楽CDよりも高音質、といえます。ただ、DVカメラ内蔵のマイクで収録しているわけだから、音質を議論してもあまり意味はありませんが。
VHSや8ミリビデオ★といったアナログテープの場合、音声は映像と合わせて記録されていました。ですから、後で、音声だけを差し替える(=アフターレコーディング。アフレコ)は不可能でした。もし、音声に効果を掛けた場合には、映像にも影響が出る(映像がアナログダビング劣化する)ことになるのです。しかしながら、DVでは、音声と映像が完全に独立しているので、アフレコが可能なのです。
★<Tips>8ミリビデオ
8ミリ/Hi8の場合、このほかに、PCM音声トラックが別に用意されているのでアフレコは可能です。ただし、PCM音声が再生可能なビデオカメラ・デッキが少ないため、折角の機能も宝の持ち腐れの感がありました。
DVカメラを32kHzモードにセットして撮影した場合、現地音(撮影時の音)は、1チャンネル目に記録されます。もう1チャンネル空いているので、DVデッキを使用してのアフレコも可能で、どちらのチャンネルを再生するか、選択することも出来ます。48kHzモードの場合は、高音質(量子化ビット数が16bits)ですがチャンネルがひとつなので、DVデッキを使用してのアフレコを実行すると、現地音に上書きされてしまう、というデメリットもあります。
DTVを行うことを前提とした、撮影時の音声モード
DTVを行うことを前提としたDV撮影時の音声モードについては、
32kHz-12bits-2チャンネルステレオの場合、DVキャプチャーすると、DTV編集ソフト上にはサウンドトラックに2チャンネル分がちゃんと表示されます。ただし、iMovieのように32kHz-12bits-2チャンネルステレオに完全対応していないソフトもありますので、注意が必要です。
このようなことを考慮すると、特別な意図がない限り、撮影時には48kHz-16bits-1チャンネルステレオで録音しておく方が無難と言えます。
DV端子
ごく初期型ののごく一部の製品を除き、DVカメラには、iLINK端子(DV端子ともいう)が搭載されています。
DV端子は、別記事で述べるとおり、IEEE1394(Macでいう、FireWire)のサブセットで、4ピンの端子です。
このDV端子間をDVケーブルで接続すると、
● デジタルで劣化なしダビングが可能です
● DV端子から、DV機器の制御も可能です
DV端子経由で、映像、音声情報だけでなく、制御情報も双方向通信しているからです。
こうしてみると、もともとDVカメラは、パソコンとの親和性も高いことがおわかりになりますね。
DVストリーム
DV端子から流れてくる信号を、DVストリームといいます。DVストリーム形式のフォーマットでは、ビデオデータ・オーディオデータのほか、撮影日時データ、TimeCode(タイムコード)などの諸情報も含まれています。
DV Codecで圧縮された、SD720×480/60iビデオ(NTSC) |
16bit-48kHz-1chステレオ-非圧縮、
または、
12bit-32kHz-2chステレオ-非圧縮、 |
DVストリーム |
MacやPCでのDV取り込みの際には、DV端子から「流れてくる信号」(=ストリーム)を、逐次、HDDに蓄積してゆきます。
DV取り込み工程では、画質劣化はゼロ
iMovieの場合、「DV端子から流れてくる信号」をその順番のままHDDに記録してゆきます。すなわち、Macに取り込まれたファイルと、DVテープ上のデータの並び方は同じDVストリームフォーマットです。
DV取り込みの際には、このように、DVテープ上の信号をそのままMacのHDDに持ってきているだけなので、なんのフォーマット変換処理/Codec変換処理がなされません。なので、このプロセスでの「画質劣化」は起こりません。 「DV取り込みの際に、画質が劣化する」というのは、全くの誤解です。
同じことは、DVダビングにもいえます。DVダビングとは、2台のDVカメラ・DVデッキをiLINK接続し、一方を再生機、もう一方を録画機としてダビング(テープを複製する)やりかたです。ここでも、再生機上のDVテープのDVストリーム信号が、そのまま録画機のDVテープに記録されてゆくだけであり、なんのフォーマット変換処理/Codec変換処理がなされない以上、このプロセスでの「画質劣化」は起こりません。
注)iLINKでの送信時のエラーについては、規格上一定量許容しています。パソコンにおける通信のように「エラーを全く容認しない」という風にはなっていませんし、もし、送信時にエラーがあっても再送信を要求する仕組みはありません(アイソクロナスなので当然といえば当然です)。
従って、厳密にいうと、iLINK送信時のエラーに伴うノイズの発生は、原理的にはゼロではありません。
しかし、通常は、iLINKにはエラー訂正機能があるので、エラーが起きても画面・音声にノイズが載るといった事態に陥ることはまれです。また、iLINK送信時のエラーならば、再度送信(つまり、再度DV取り込み)すれば済みます。送信エラーなら同じ箇所で起きる確率は相当低いですから。
画面・音声にノイズが載るとしたら、撮影時のテープ書き込みエラーが大半です。例えば、強い衝撃のためテープトラッキングがうまくいかなかった、テープ上のほこりが載っていた、テープのその箇所に不具合があった等が考えられます。DV取り込みを何度行っても同じ箇所でノイズが出るなら、撮影済テープの「その箇所」にエラーがある可能性が濃厚です。撮影テープ自体に問題があるなら、あきらめるしかありません。
撮影日時データやTimeCode
DVストリームには、ビデオ・オーディオデータのほかに、撮影日時データやタイムコードなどの情報も含まれています。
参考情報 [基本編] DV/HDVテープの撮影日時データやTimeCode
撮影日時データ
iMovieのイベントライブラリ機能は、この撮影日時をキーとして素材を管理するので、ビデオカメラの時刻は正確に合わせておきましょう。デジカメ写真とiPhotoの関係と同じですね。
海外旅行の際には、時差補正をしておくことをお勧めします。日本時間のままの設定だと、現地時間で同一日(朝から夜まで)に撮影したにもかかわらず、iMovie上でのイベント管理の際、(日本時間に従って処理するので)二日間にわたって分かれてしまうこともありますので。
タイムコード
タイムコードは、テープ冒頭を00:00:00;00とし、そこからの経過時間を記録するものです。「テープ上の絶対位置」を判断する重要な情報です。
iMovieには、TimeCodeを活用した機能はありませんので、TimeCodeを特に意識する必要のですが、それでも、(例えば、iMovieプロジェクトをFinal
Cut Express、Final Cut Proに持ってゆく、といった場合に不都合をさけるために)、ひとつだけ気をつけてください。それは、撮影時に無録画部を作らない、ということです。
一旦巻き戻したあと、撮影を再開する際には、無録画部を作らないように、記録画部にオーバーラップするようにします(こうなると、前回の撮影時には、最後のシーンは上書きされてもいいように、長めに撮影しておく必要があります)。あるいは、DVカメラに「エンドサーチ」機能がある場合には、これを活用しましょう。
「タイムコード先打ち」も効果的です。
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