[基本編] 1-2-2. HDVカメラの基礎知識
HDV規格は、現行DVテープ上に、HDビデオを記録するための規格です。HDV規格を眺めながら、また、DV規格と比較しながら、ポイントを解説してゆきます。
HDV規格の収録メディア
HDV規格では、HDV 1080i、HDV 720pとも、収録メディアはDVテープ、と規定されています。市販製品には、"HDV対応"と謳った、いわゆる「HDVテープ」も発売されていますが、規格上は、従来のDVテープカセットと全く同じ物です。テープの走行速度や、テープ上のトラッキング等も含めて、DVテープと全く同じなので、「HDVテープ」をDVカメラで使用することもできますし、その逆も可能です。
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HDV
規格 |
DV規格 |
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HDV
720p |
HDV
1080i |
DV-NTSC |
メディア |
miniDVカセットテープ、標準DVカセットテープ、 |
テープカセットのサイズ
DVテープには、miniDVテープカセット(一般的に入手可能なもの)の他、主に業務用途で使用されるStandard DVテープカセットが存在します。コンシューマ向けHDVカメラで採用されているのはすべてminiDVテープカセットです。
業務用HDVカメラ/デッキの一部機種でStandard
DVテープカセットが使用されているものもあります。
収録時間
HDV 720pでは、DV同様長時間(LP : Long Play)モードがあり、標準(SP : Standard
Play)モードの1.5倍収録することができます。例えば、店頭で売れ筋の60分テープならば、LPモードでは、90分収録が可能です。
一方、HDV 1080iには、LPモードはありません。
テープフォーマット
10μm幅のトラックごとでヘリカルスキャン方式でテープ上に信号が記録されている点ではDVと同じですが、それ以外は異なっている点があります。
まず、DVのように10トラック分で1フレームを記録するわけではなく、計150トラックがひとかたまりになって記録される点が異なります。後に説明するとおり、MPEG2
Video CodecはGOP単位で処理がなされています。MPEG2のGOPは15フレームなので、計150トラック分でひとつのGOP分に相当するのです。この計150トラックには、ビデオ・オーディオ・その他情報がMPEG2-TS形式で収納されています。
また、セクタに関しては、
HDV 720pの場合は、DVテープのビデオセクタに相当する部分にMPEG2-TSフォーマット(MPEG2 VideoとMPEG-1 Audio Layer II)を書き込みます。つまり、DVテープのオーディオセクタに相当する部分は空です(この領域を利用して、PCMオーディオを収録する拡張規格もありますが、商品としては発売されていません)。
一方、HDV1080iでは、DVテープのビデオセクタもオーディオセクタも、一緒くたにして書き込んでいます。
HDV1080iには、LPモードはありません
HDV 1080iには、LPモードはありません。
一方、HDV720pは、DV同様LPモードがあり、収録時間は標準(SP)モードの1.5倍にできます。
SPモードもLPモードも、画質は同じです。
テープの走行速度を2/3に落とし、テープ上への書き込み幅(トラック幅)も2/3に狭めることで、同じ長さのテープに1.5倍のデータを書き込み、収録時間を長くする、という仕組みです。この仕組みですと、SPモードでもLPモードでも「圧縮率」は同じですから、画質は同じです。
一方、トラック幅を狭めているので、エラーの発生確率が若干増える恐れがあります。そのこともあって、自己録再が強く推奨されています。
自己録再:撮影したビデオカメラそのもので、再生すること。
いわゆる「HDVテープ」って??
いわゆる「HDVテープ」と従来のDVテープは、規格上は全く同じと説明しました。「HDVテープ」をDVカメラで使用することもできますし、その逆も可能です。
また、例えば(MacDTV.comはお勧めしませんが)同一のDVテープ上に、DVとHDVを混在して収録することもできます。このテープをHDVカメラで再生しTVで見ると、HDVで撮影したシーンは高精細画質(HDビデオ)で、DVで撮影したシーンは通常画質(SDビデオ)で、それぞれ再生されます。
[参考情報] ソニーサポート よくある問い合わせ (Q&A) HDV規格とDV規格の混在するテープは再生できますか?
「DVテープ」と「いわゆるHDVテープ」との違いは、品質や耐久性((高出力・低ノイズ化などによりエラーやドロップアウトの発生率を低減等)にあるようです。のちに述べるとおり、HDVの圧縮に用いられるMPEG2は、DVに比べるとエラー耐性が小さいのです。DVの場合、ひとつのエラーが起きても1フレームにしか影響しませんが、MPEG2の場合ひつとうエラーが前後15フレーム(GOP)に影響することがありえます。そのため、品質や耐久性などを従来製品よりも向上させたことをもって「ハイビジョン録画におすすめ」等と称しているようです。
HDD収録型HDVカメラ
一部の業務用HDVカメラでは、オプションアクセサリ(HDDレコーディングユニットやメモリーレコーディングユニット)を追加すれば、HDDに収録することが可能です。Final Cut
Proではメーカ提供のプラグインを使用することで取り込み可能です。残念ながら、iMovie、Final Cut Expressでは、このHDD収録データをキャプチャーできませんが、もともとHDD収録はハイエンドユーザ向けのオプションなので致し方ないところでしょう。
業務用HDVビデオカメラ ソニー HVR-Z5Jの例
ハードディスクレコーディングユニット HVR-DR60、メモリーレコーディングユニット HVR-MRC1K
Final Cut Pro用プラグインソフト Sony Recording Unit RAD Plugin
HDV規格のビデオデータ:
フレームのサイズやアスペクト比、Codecなど、HDVのビデオ規格情報をまとめました。
HDV
720pは、「フレームサイズ1280×720(アスペクト比16:9)、25, 30, 50, 60fpsプログレッシブ」のHDビデオをMPEG-2(MP@H-14、8bit、4:2:0サンプリング)で圧縮し、圧縮後のビットレートを約19Mbpsに抑えています。
HDV
1080iは、「フレームサイズ1440×1080(アスペクト比16:9)、50, 60fpsのインターレース」のHDビデオをMPEG-2(MP@H-14、8bit、4:2:0サンプリング)で圧縮し、圧縮後のビットレートを約25Mbpsに抑えています。
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720/60p
720/30p
720/50p(PAL)
720/25p(PAL) |
1080/60i、1080/50i |
480/60i |
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1280×720 |
1440×1080 |
720×480 |
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16:9 |
4:3 ( 16 : 9 ) |
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MPEG 2 Video
(プロファイル&レベル:MP@H-14) |
DV |
| 74.25MHz |
55.7MHz |
13.5MHz |
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4:2:0 |
4:1:1 |
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8ビット(輝度/色差共) |
8ビット(輝度/色差共) |
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約19Mbps |
約25Mbps |
約25Mbps |
DVでは、ビデオ信号はDVという圧縮方式(Codec)で圧縮されていますが、HDVでは、MPEG2 Video方式(MPEG2 MP@H-14)でビデオ圧縮されています。
MPEG2は様々な用途・画質を想定した非常に幅の広い規格で、プロファイルとレベルの二つの概念でクラス化されています。MPEGというと、例えばDVD-VideoやDVD/HDDレコーダなどでおなじみですが、これらは、MPEG2規格の中でもMPEG2
MP@ML(Main Profile at Main Level)が採用されています。
一方、MPEG2規格では、HDTVをターゲットとしたいくつかのプロファイル・レベルも定義されており、HDVのMPEG2 VideoではMP@H-14を採用しています。
MPEG2 Video Codecは、時間圧縮型(フレーム相関圧縮)Codecなので、複数フレームをひと固まりとし、「固まり」ごとに圧縮処理がなされます。MPEG2
Video Codecの場合、この「固まり」のことをGOP(Group of Picture)と呼び、1つのGOPは15フレームで構成されます。従って、撮影・編集の際も、GOP単位で(15フレーム単位で)行われますし、万が一、収録エラーが起きてしまった場合、ひとつのエラーの影響が15フレーム(0.5秒)に渡って現れることがあり得ます。
[参考情報] 2005.07.26 ソニー、HDVをお使いのお客様へ重要なお知らせ@MacDTV.News
DV Codecは、空間圧縮型(フレーム内圧縮)Codecなので、撮影・編集の際も、フレーム単位で行われますしし、万が一、収録エラーが起きても、そのフレームにしか影響は現れません。
オーディオデータ:
HDV 720p、HDV 1080iとも、MPEG-1 Audio Layer II(48kHz, 16bit)にて、ビットレートを384kbpsに抑えています。
DVでは、オーディオ信号は圧縮されていません。[48kHz -16bit - 1chステレオ]と、[32kHz -12bit - 2chステレオ]の二つのモードがあり、データ転送レートは、約1.5Mbpsです。
一方、HDVの場合、オーディオ信号は、MPEG-1 Audio Layer IIで圧縮されています。
[48kHz -16bit - ステレオで、転送レート384kbpsという規格はどうか、というと、iTunesで384kbpsとなると、まあ結構な音質ですよね(iPodで聴くとき128kbpsなどが一般的ですよね、それに比べれば)。それに、HDVカメラ内蔵のマイクの性能を考えると、384kbpsという転送レート自体にはさほど不満は出ないはずです
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MPEG-1 Audio LayerII |
非圧縮リニアPCM |
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48kHz -16bit - 1chステレオ |
48kHz -16bit - 1chステレオ
または
32kHz -12bit - 2chステレオ |
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384kbps |
約1.5Mbps |
多重化:
多重化には、MPEG2-TS(Transoport Stream)を採用しています。
お断り)正確には、HDV720pのストリームタイプはMPEG2-TS、HDV1080iはMPEG2-PES(Packetized
Elementary Stream)ですが、MacDTV.comでは、特別に断りがない限り、両者とも"MPEG2-TS"と総称して表記しています。ですから、あえて"MPEG2-PES"と記載してある場合には、総称してはまずいような特別な意図を込めて書いております。
ストリーム、システムの規格
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MPEG-2 Systems |
DV Stream |
| Transport Stream |
Packetized Elementary Stream |
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IEEE-1394 (MPEG2-TS) |
IEEE-1394 (DV) |
ストリームインターフェース
DVカメラには、FireWire端子(iLINK端子)が搭載されており、FireWireを介してやりとりするデジタル信号をDVストリームといいます。
HDV対応カメラにもFireWire端子が搭載されており、ここから出力されてくるデジタル信号は、(DVストリームではなく)MPEG2-TS(MPEG2トランスポートストリーム)です。MPEG2-TS内には、前述のMPEGビデオとMPEGオーディオ情報が含まれています。
データ転送速度は、HDV 720pで19Mbps、HDV 1080iで25Mbpsです。
なお、現在発売されているHDVカメラには、DV撮影モードが搭載されているものがほとんどです。これらのDV/HDV両対応カメラでは、DVで撮影した場合にはFireWire経由でDVストリームが流れてきます。また、HDVで撮影した場合でも、指定すればDVに変換(ダウンコンバート)してFireWire出力でDVストリームを送信することのできる機種もあります。
[参考情報] HDV→DV変換
ストリームタイプ
FireWire内はMPEG2-TS、と書きましたが、ただし、HDVテープ上での記録データの形式(ストリームタイプ)は、HDV 1080iでは若干異なっており、HDV
720pではMPEG2-TSそのものなのに対して、HDV 1080iではMPEG2 Packetized Elementary Streamになっています。とはいえ、MPEG2
PESでテープ上に記録されているHDV 1080iでも、再生してFireWireに流れてくる時点で、MPEG2-TSに変換されているわけで、ユーザとしては特に気にする必要はありません。
お断り)ここで記載したように、HDV720pのストリームタイプはMPEG2-TS、HDV1080iのストリームタイプはMPEG2-PESですが、
MacDTV.comでは、特別に断りがない限り、両者とも"MPEG2-TS"と総称して表記させて頂きます。ですから、あえて"MPEG2-PES"と記載してある場合、総称してはまずい、そんな意図を込めて書いております。
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