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2000.04.11改訂 |
本日、Apple、Matrox、Pinnacle Systemsは、全米放送機器展(NAB2000)で衝撃の発表を行いました。じっくりみてゆきましょう。
● 今回の発表の概要
■今回の発表の概要
全米放送機器展(NAB2000)でにおける、Apple Computer社、Matrox社、Pinnacle Systems社による衝撃の発表。概要は次の通りです。
●Apple、FinalCutPro1.2.5を発表
来月に無料アップデータ登場が予定とのことです。
バグフィックスを何とかしてほしいところですが、主だったところでは、16:9、YUVプロセッシング*)、リファレンスムービーをサポート。
たぶん、エッジ付きテキストジェネレータもついてくるんじゃないのかなあ(笑)。*)YUVプロセッシング : いまはRGBで内部計算しています。DVにしても、M-JPEGカードでのアナログ取り込みにしても、YUVコンポーネントでデータが書き込まれていますから、これをRGBに換算し直して処理しているのですね、今は。RGBとYUVの換算は加減乗除でできますから、処理自体は重い負荷ではないのですが、換算に伴う誤差が画質上問題となることがあるのですね。
日本語版はどうなるのかな。
●Pinnacle、SD/HD無圧縮ビデオボードTARGA Cineを発表
まあ、FinalCut ProではTARGAを標準にしてましたからねえ。順当といえば順当です。
SD (標準解像度)、HD (高解像度)対応。いずれも、非圧縮が可能。
詳細はわからないのですが、SD(525i)だというまでもなく30MB/sですが、HD(720pや1080i)だと非圧縮で50MB/sを越えるんじゃなかったでしたっけか(この辺調べてみないと)。それにしてもすごい性能ですね。
SDの非圧縮デュアルストリームはどうなのでしょうか。そうそう、Pinnacleならば、DV500もMac対応してほしいなあ。ということで、下の記事(ついに登場、リアルタイムシステム)では、DV500のことも書いてます。
●Matrox、DVリアルタイムレンダリングPCIカードRTMacを発表。
今回の目玉ですね。下の記事(ついに登場、リアルタイムシステム)で詳しく解説します。
●AppleによるAstarteのDVDプロダクトを取得。
これも、RT Macと関連があると思われます。下の記事(ついに登場、リアルタイムシステム)を見てください。
■ついに登場、リアルタイムシステム
今回の発表のなかでもひときわ興味を引く、Mac初リアルタイムシステムの登場。RTMacなるものの素性がはっきりしない今日の時点では、例によってWinでのDTVからの類推で占ってみましょう。
WinでのDTVで話題の低価格リアルタイムカードの発売元であるMatroxとPinnacle Systems。MatroxといえばRT2000、PinnacleといえばDV500、ですね。
いずれも、20万円以下の「デュアルストリームノンリニアシステム」として、今Winでは話題になっております。
DV500:\178,000- RT2000:\198,000 今回発表のRTMacが、RT2000のMac版なら(価格的にそのように予想されます)、基本性能は、RTMacとRT2000では同じはずです。
ということで、以下の記事は、The RTMac最終版とは違っていることも大いにあり得ますので、そこのところはあらかじめご了承ください。
発売は今年の秋ですから、状況は変わっているかもしれません。Velocity Engine対応次第でしょうし、RT2000の後継機ベースかもしれないし。PowerMac G4もマルチプロセッサ+UMA2のマシンになっていたり、なによりもMacOS Xが登場しているはずだし。
どうせWinでの実状分析をするのですから、今後に期待を込めて、PinnacleのDV500についてもまとめましょう。Winでは両者はよきライバルなのですから。
ポイントは、
- デュアルストリーム:同時に2チャンネルの映像を入力・再生可能
- リアルタイムエフェクト
の2点となっています。
■デュアルストリーム
デュアルストリームとは、同時に2チャンネルの映像を入力・再生を行うことです。
DV500:
DV入力のデュアルストリーム取り込みが可能です。
アナログ取り込みも、デュアルストリーム取り込み可能ですが、CodecはDVになります。
つまり、DV500の場合、取り込んだムービーは、すべてDV形式となっています。
RT2000:
DV入力のデュアルストリーム取り込みが可能です。
アナログ取り込みものデュアルストリーム取り込み可能ですが、Codecは、DVとMPEG2とのどちらかを選べます。
カード上のFireWire端子から入力したDV信号をMPEG2にリアルタイム変換することはできないようです。一旦、HDD上にDVファイルを取り込み、これをMPEG変換することになるようです。
カード上のアナログ端子から入力したアナログ信号は、リアルタイムにMPEG2ファイルになります。
このMPEG2ファイルがそのままDVD Videoに使用できるかは、どうもわかりません。さて、今回のThe RTMacがMPEG対応しているか、記載がありません。しかし、MPEG機能をThe RTMacでわざわざ外す(ことでコストダウンをねらう)ことはプロシューマをターゲットとしたAppleのPowerMacプロダクトでは考えにくいですね。さらに、AppleがAstarteのDVD プロダクト開発部門を買収・取得したことを考えあわせると、ここら辺の整合性がとられないとは、ちょっと考えにくいですね。
ということで、The RTMac(のMPEGエンコーダ機能)と旧Astarte社製品群を組み合わせて、PowerMac G4を最強のDVDオーサリングシステムとしてアッピールする、という展開は充分に予想されます。
■リアルタイムエフェクト
効果シーンの処理速度向上、これがなんといっても興味のあるところでしょう。
始めにいっておくと、RT2000にしても、DV500にしても
- アナログ出力の場合、リアルタイム出力(リアルタイムにレンダリングしながらのアナログ出力)は可能
なのですが、
- DVの場合、リアルタイム可能なのはプレビューのみ、
なのです。
これはどういうことかというと、DVの場合には、プレビューは確かにリアルタイムにプレビューレンダリングをこなすことができますが、DV出力前にはレンダリングしなければいけない、ということです。
アナログの場合、DV伸長して特殊効果処理演算を行ったらそれをアナログ出力すればよいのですが、
DVの場合、DV伸長して特殊効果処理演算を行ったのち、それをさらにDV再圧縮しなくてはならないのですから、アナログよりもヘビーな処理ですよね。
もちろん、最終レンダリング処理はアクセラレートされますから、これらのカードを使用しない場合に比べて、速度の大幅な向上が見込まれる訳です。でも、残念ながら、リアルタイムなDV出力にまでは至っていない、これが現状です。
リアルタイムプレビュー
リアルタイムはプレビューだけ、とはいっても、プレビューが速いと言うことは試行錯誤の回数を増やせることを意味しますから、DTVの作業性の大幅な向上が期待されます。
DV500:
2チャンネルビデオ+1トランジッション
または、
1チャンネルビデオ+1タイトル(または1フィルタ)+1トランジション
RT2000:
2チャンネルビデオ+1トランジッション+1タイトル(または1フィルタ)
注)いずれの製品も、静止画は、テロップ入れなどのスーパーインポーズなどに使用。
といったところで、RT2000の方が若干優れています。
なお、今回発表のThe RTMacが現行RT2000のMac版である、と仮定して書いてきました。しかしながら、発売は今年の秋ですから、状況は進んでいるかもしれません。
そもそもRT2000の後継機ベースの製品かもしれないし。
PowerMacの側についても、Velocity Engine対応次第でしょうし、PowerMac G4もマルチプロセッサ+UMA2のマシンになっていたり、なによりもMacOS Xが登場しているはずだし。こういったことを考えると、最低限でもこの程度は達成できる、おそらくこれ以上になるはず、と楽観的に判断しておけばよいと思います。
たとえば、Canopus社のDV Rex RTでは、
DV出力時もリアルタイム可能、10トラックまでのリアルタイムエフェクトが可能、そのためにPemtium IIIのマルチプロセッサマシンを使用
といったことを考えると、RTMac+PowerMac G4がこれに肉薄するものになる、ということも充分に期待できることだと思います。
リアルタイム対応編集ソフト
これらのカードの能力を引き出すには、対応編集ソフトが必要です。
いうまでもなく、Final Cut Proがそれなのですが、Final Cut Proでも通常のエフェクトを使った場合には、リアルタイムにはなりません。リアルタイム処理用に対応した効果しか、その恩恵を受けられないのです。
では、他のソフトではどうなるのでしょうか。
Premiereの場合、Winではこれらのカード専用のPremiere RTバージョン(Real Time Version)がバンドルされてきます。カード自体のドライバは、Final Cut Pro用としてすでに用意されているわけですから、Adobeの努力により、Mac版Premiere RTについても比較的容易に対応できるものと思います(技術的ノウハウはすでに持っているはず)。あとは、やる気の問題ですが。
ノウハウという意味では、他のソフトの場合、Adobeには劣るものと思われます。
しかし、もし、AppleがQuickTime Effects*)をRT対応にしてくれたなら、
*)QuickTime Effects : QuickTimeに組み込まれているエフェクト機能。
通常、DTV編集ソフトはそれぞれのソフトごとにエフェクト処理エンジンを備えています。だからこそ差別化できるわけですが、一方で、無駄といえば無駄です。そこで、QuickTimeの機能としてエフェクトを提供しよう、それが、QuickTime Effectsです。どの編集ソフトでも、QuickTime Effectsを使う分にはリアルタイム機能を享受できるようになるのですが。さて、どうでしょう。
■リアルタイムの恩恵
これは、一度使ってみるとわかりますが、プレビュー待ちがないのは、便利の一言です。
でも、休みなしに編集するのは、なんだかつらくなってきますね。プレビュー待ちというのも、良い気分転換です(笑)。わたしなんかは、プレビューレンダリング待ちに、別のMacで別の作業(CGを作ったり、Webサイトや原稿を書いたり)をしてますから、実作業上はあんまりありがたくないかも(笑)、と思ったりします。
もちろん、時間に追われたプロの方にとっては、待望のものなのでしょうね。
最終レンダリングの高速化もすばらしいですが、一方で、このシステムは、DVなりアナログなり、Tape出力を最終目的にしていることに注意してください。すなわち、CD-RやWebで使用するムービー作成のためのレンダリングには貢献しない、ということです。
リアルタイムが本当に必要な方は、たぶん、すでにWinに移行しているんじゃないかなあ、と思います、正直なところ(笑)。
私自身は、Mac DTVのアドバンテージは、マシンやレンダリングの速さでなく、DTV作業全体を見通した上での作業効率の高さ、自由度の高さ、にあると思っています。ですから、以前から「Macにはリアルタイムシステムがないから、なんたら...」という意見には与しません(でした)。
Macでもリアルタイムエフェクトが安価に享受できるようになったことはすばらしいことです。しかし、このように、最終目的であるとか、自分の作業の進め方などを思い返してみて、リアルタイムシステムの必要性を判断してみてください。
え、わたし、必要性はあまりないけど、たぶんRTMacを買ってしまうと思います(笑)、例によって(笑)。
■今回の発表の戦略的な意味
最後に、今回の発表の戦略的な意味を考えます。といっても、そんなこと、わたしにわかるはずないのですが(笑)。
まず、Macというプラットフォームがハイエンド〜プロDTVに適したシステムである、というアッピールになると思います。つまり、DTVのあらゆるジャンルに製品が用意されている、ということです。具体的には、
アナログ非圧縮のTapeものには
●TARGA(やMedia100)でハイエンド
DVでは、
●初心者向けにはiMovie
●ミドルレンジまでは、内蔵FireWireとFinal Cut Pro
●ハイエンドならThe RT Mac
また、Tape以外の用途の制作なら、
●DVD Video(MPEG2 MP@ML)なら、今回取得した旧Astarte社の製品群
●CD-ROMやWebでのインタラクティブものなら、QuickTime
●インターネットストリーミングには、QuickTime Streaming Server
これらのものが、Appleのwell-controlledな状態におかれているわけです。
例えば、MicrosoftやIntelがこれらのDTV各分野の製品群をコントロールすることは不可能ですよね。やれるとしたら、AVIDの音頭取りか??
こう意味で、Appleらしい、Macという商品特性をよく理解した戦略であると思います。一方で、選択肢豊富なWin DTVに比べると弱みも抱えることにもなるのですが...。そんなこというと、DTVに限らずMac自体の弱みとも共通するのですが(笑)。
なお、下でも述べますが、従来のすべてのDTV製品をMacOS Xに載せ変えるというのは不可能でしょうから、製品をある程度絞り、Appleが充分にコントロールする、というのは重要なことです。
そして、これを支える基盤として、今年秋には
●堅牢で、マルチプロセシングや分散処理に優れたMacOS X。
●マルチプロセッサ搭載で、メモリアクセスが向上した次期Power Mac G4。
●その心臓であるG4プロセッサは、もともと行列演算や浮動小数点演算に優れたAltiVec搭載はいうまでもなく、秋口には1GHz版の第2世代G4の登場も予想される
といった点でも、大幅なジャンプアップが見込まれます。
MacはDTV用最強のプラットフォームだ、とアッピールするのに充分ですね。
今年後半以降にはMacTV界も大きく変わります。というのは、MacOS X登場により、否応なく、従来のDTV製品群が淘汰されるからです。
MacOS9までのソフトはCarbon対応していればMacOS Xでも使用できる、とお聞きになっているでしょうから、MacOS Xへは緩やかに移行してゆくものとお考えになっているかもしれません。
しかし、ことDTVにおいては、そうではありません。DTVはハードウェアに依存する部分が大きいからです。例えばMacOS9まで使えていたカード類も、MacOS X用のドライバを新たに用意しなくてはならないのです。開発意欲のないメーカの製品は、MacOS Xにはついて来れないことは明白です。
こういったことを考えると、MacOS X登場により、従来のDTV製品群は否応なく淘汰され、再編成が起こるでしょう。
そうしたときに、今回の発表内容、そして発表内容からぼんやりと見えたApple社のDTV戦略、を考えると、新しい息吹、まさに新しい時代がくるのだな、と感じざるを得ないのです。
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Yasushi SATO |
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