|
どういった位置づけのソフトなのか |
|
ここでは、Final Cut Proの全容や、その位置づけについてご紹介します。
■DTV編集ソフトを見回して...
機能であるとか操作感であるとか、そういった各論はさておき、まずは、Final Cut Proとは、どういった位置づけのソフトなのか、総論からお話ししないといけなかったですね。
DTVの作業工程を見回してみると、以下のようなステップがあります。
ムービーを取り込み、ムービーの編集をします。そして、編集工程では、特殊効果を付けたり、ムービーペイント(ロトスコーピング)を施したりもします。そして、編集が完了したら、ムービーを書き出しで作品は完成します。
これらの作業工程を受けて、一般的にDTV編集ソフトというのは、こんな感じの分類になります。
● DTV編集ソフト
後述します。
● 特殊効果ソフト
後述します。
● ムービーペイントソフト
ムービーペイントソフトは、SFXスペースオペラものでおきまりのレーザ光線、ライトサーベル、オーラといった効果を、ムービーの一フレーム一フレームにペイントすることで作成するものです。後述します。
● ムービー書き出しツール
ムービー書き出しに特化したツールです。DTV編集ソフトのムービー書き出し機能よりもはるかに強化されています。後述します。
■DTV編集ソフト
ここでいうDTV編集ソフトとは、キャプチャーから、ムービー編集を行い、ムービー書き出しを行って作業完了、というDTVの作業手順を全て網羅しているタイプです。(ここでは、便宜的にDTV編集ソフトと呼ぶことにします。)
このジャンルのソフトには、PremiereやEditDV、VIDEOShop、EditDV unpluggedなんかが該当します。iMovieもそうですね。
このジャンルの特徴は、(リニア編集といった「ビデオテープ」の編集を目的とした)いままでのビデオ編集システムをパソコン上に再現する、といったところから出発しています。
これは、DTPが、出版作業をMac上でシミュレーションすることから始まったことと非常に似ています。
ですから、このジャンルの目的は、
● ムービー取り込み機能とムービ書き出し機能(テープ書き出しや、ムービーファイル書き出しを含む)という、入力・出力機能の提供
● ムービーの素材管理と、その並び順の管理(カット編集)
● いままでのビデオ編集編集システムが提供してくれていた特殊効果処理
● ワイプやディゾルブといった画面転換(トランジッション)
● テロップに代表されるような画面合成(スーパーインポーズ)
● フィルタ効果、などが中心になります。テープを取り込んで、紡いで(編集して)、テープに書き出す、この一連の作業をまずはターゲットにしているのです。
■特殊効果ソフト
このジャンルでは、ムービー編集工程に特化して、いかにもコンピュータらしいエフェクト処理を行うためのものです。いうまでもなく、After Effectsが代表的です(というか、Final Cut Pro以前は、After Effectsの独壇場でした)。
なお、特殊効果ソフトには、取り込み・書き出し機能がないので、これ単独では、DTVはできません。あくまでも、ムービー編集機能を強化、特化したものです。
この手のジャンルのソフトは、前述のDTV編集ソフトがいままでのビデオ編集編集システムをMac上で再現することから出発しているのとは対照的に、Mac上でアニメーションを作成することが原点です。例えば、このオブジェクト(テロップとかレイヤーとか)に対しこのタイミングでこのイベントを行え、といった操作方法です。
例えば、3Dソフトのアニメーション機能や、Macromedia DirectorやFlashのような2Dアニメーションと共通する発想と操作性を持っています。スクリプティングといったいかにもパソコンらしい作業とも、非常に近いものです。
つまり、この手のジャンルのソフトはDTVというものを、ビデオ機器側からではなく、パソコン側から捉えているのです。
さあ、DTV編集ソフトと特殊効果ソフト、この思想・テイストの違いは、お判りになったでしょうか。両者は、テイストも目的も発想も、なにもかも違っているのです。もちろん、両者は、対立する概念ではなく、相補的なものなのですが...。
PremiereとAfter Effectsの両刀使いの方なら、実感を持ってうなずいてくださるはずだけど...。
■Final Cut Pro単体アプリケーションの位置づけ
ここまで説明してきた内容をかみしめながら、お読み下さい。
Final Cut Proは、PremiereとAfter Effectsを合わせたもの、とマーケッティング文句を聞くことが多いですが、これは、前述のDTV編集ソフトと特殊効果ソフトをうまく融合させたもの、という意味では正解です。
ただ、これは口で言うのは簡単ですが、これを分かり易く操作性に仕上げるのは並大抵のことではないと思います。だって、説明してきたとおり、両者は、生まれも考え方も目的も、すべて違っているのですから。
ここを非常にうまく(違和感無く)統合してあるというのが、Final Cut Proの本質だとわたしは思っています。
DTV編集ソフトと特殊効果ソフトを融合させるための仕掛けとして、一つ目にはインターフェースが考え抜かれている点があります。
Final Cut Proのインターフェースは変幻自在で、その分、今までのDTV関連ソフトをお使いの方は当初は混乱されるかもしれません。ある意味で、Premiere的モードとAfter Effects的モードを手動で切り換える方が、古くからのユーザには分かり易いのかもしれません(笑)。
でも、Final Cut Proは、モードなどは感じさせることもなく、作業内容に応じてウインドウ内の表示内容を替えてくれます。でも、全体としてのインターフェースは一貫しています。この辺の作り込みはさすがAppleテイストだと感心させられます。
また、DTV編集ソフトだと、クリップウインドウだ、エフェクトウインドウだ、となにかとモニタ上が煩雑になりがちですが、Final Cut Proでは、各ウインドウにタブを設けることでうまく画面整理と操作性の共通化を図っています。
また、クリップの管理もとてもやりやすいです。ユーザインターフェースにおいて、いままでのDTV編集ソフトとはひと味違います。
もうひとつは、FXScript。これは、特殊効果ソフトの正当な子孫たる機能といえます。これは、モーションやトランジッションなどの特殊効果をスクリプトで記述するものなのですが、もっと簡単にいうと、Macromedia DirectorのLingoに相当するもの、というとお判りいただけるでしょうか(実際、Macromediaで開発されていた頃は、Lingoに酷使していたといいます)。
After Effectsのプラグインも使用できる点も優れていますね。
■Final Cut Proパッケージとしての位置づけ
最後に、パッケージとしてのすばらしさをご紹介しましょう。
Final Cut Proパッケージには、
● Final Cut Pro ソフトウェア
の他に、
● QuickTime Pro ソフトウェア
● Maxon Computer 製CINEMA 4D GO
● Puffin Designs 製Commotion DV
● Terran Interactive 製QuickTime 用Media Cleaner EZ 4
● Focal Point Systems 製EDL Access
● 包括的チュートリアルの付属したインストラクションマニュアル
● キーボードショートカットラベル2 セットがバンドルされています。
特に、Media Cleaner EZは、あのムービー書き出しツールMedia Clear ProのLite版ですし、Commotion DVも、あのムービーペイントソフトCommotionのLite版です。
つまり、Final Cut Proパッケージ1本で、すべてのDTV作業工程をこなすことができる、というわけなのです。こういった点でも、パッケージとしてのFinal Cut Proのすばらしさがわかりますね。
こういった全容のご紹介も、各機能の詳細に触れる前にはいかがだったでしょうか。
|
Copyright(C)
Yasushi SATO |
--Macでお手軽ビデオ編集TopPageにもどる--