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2001.03.21改訂 |
今年のMacWolrd Expo/SF(そしてその焼き直し(笑)だったExpo/Tokyo)の注目点は、なんといってもDVD戦略。iDVD、DVD Studio Proは、DTVファンにとっては嬉しい限りです。なんといっても、ハイエンドアマチュアにもDVD Videoが降りてきた訳ですから。夢のような時代です。
PowerMac G4 733MHzの出荷も始まり、ようやくDVD-Rドライブを目の当たりにできるそうな今日この頃。ここらで、AppleDVD戦略なるものを眺めてみましょう。
DVDと呼ばれる円盤(笑)は、世に数多く登場していますので、まずは、ここをまとめておきましょう。
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DVDVideo | |||
Ver. |
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ディスク形状 |
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容量 | 片面 |
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4.7GB(Ver.2) |
8.5GB(2層) |
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両面 |
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17GB(2層) |
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データ転送レート |
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カートリッジの有無 | カートリッジ入り | カートリッジ入り。 カートリッジなしは4.7GBのみ。 |
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記録方法 |
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書き換え可能回数 |
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力を入れている企業 | 松下,日立,東芝,ビクターなど,家電メーカが多い。8cmメディアについては、日立のDVD-RAMビデオカメラが採用。 | パイオニア,ソニー,シャープ,三洋などの家電メーカ。 富士フィルム,日立マクセル,TDKなどの素材メーカ。 |
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DVD Videoとの互換性 | DVD-RAM対応DVD Video Playerのみ | DVD-RW対応DVD Video Playerのみ |
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用 途 | 多目的。 | AV用途 | AVのオーサリング用途 | PCデータ | AV | |||
DVD RAM
for PC Data:元々DVD-RAMは、PDやMOといった「PC Dataのストレージ」の素性を持つ技術的にも、松下のPDからの流れも汲んでいる。 DVD RAM for AV Data:AV用途としての使い道。AV Dataを利用するには,ビデオレコーディング規格(DVD VideoやDVD-Rのビデオ規格とは異なる)に基づく。 |
録画可能な円盤、との位置づけのメディア。 AV Dataは,ビデオレコーディング規格(DVD-RAMと同じ)に基づく。 |
DVD Videoのオーサリング用。 業務用としてのDVD for Authoringと |
DVD-RAMやDVD-RWと異なり、ビデオ規格に基づく。 |
これらの他に、ソニー,フィリップスらによるDVD+RWやDVD-Blue、DVD-RAM陣営によるDVD-Multi(DVD-RWの記録・再生機能を取り入れたDVD-RAM)などが開発中です。
百花繚乱、魑魅魍魎、複雑怪奇。よくわかりませんよね。できるだけ、まとめてみたつもりなんですけど。
簡単に言うと、メディア自体の特性として3つのカテゴリー(DVD-RAM、DVD-R/RW、DVD VideoやDVD ROM、の3つ)、用途として2つのカテゴリー(AVデータ用、PCデータ用の2つ)があります。
メディア自体の特性 RAM R / RW ROM 用 途 AV用途 DVD-RAM for AV Data DVD-R
DVD-RWDVD Video PC用途 DVD-RAM for PC Data DVD-ROM
メディア自体の特性としては、
- これまでのCD-ROMや音楽CDに相当するものがDVD-ROMやDVD Videoで、これらは工場でプレスすることになります。
- それに1回書き込み、複数回書き込みが可能なように進化してきたものがDVD-R、DVD-RWで、CD-RとCD-RWに相当します
- 一方、DVD-RAMはどちらかというと、PDやMOといったものに相当します。実際、技術的にはDVD-RAMはPDの流れも汲んでいます。
これらのメディア特性を考えた上で、二大用途であるAVデータ用、PCデータ用にと実用化することでこれらの規格に分かれたものです。
なお、AVデータ用途では、もともとのDVD VideoやDVD-R上で利用される「ビデオ規格」と、DVD-RAMやDVD-RWなどで採用されている「ビデオレコーディング規格」があります。両者の違いは、端的に言うと、オーサリング作業が必要であるか否か(終了処理が必要か不必要か)にあります。すなわち、DVD Video(やDVD-R)の場合オーサリングは必須(そこを担うのがiDVDやDVD Studio Proソフト)ですが、DVD Videoは誰かが作成したモノを再生するだけの楽しみ方ですから、それでもよいでしょう。しかし、家庭用AV機器にも利用されようとしているDVD-RAMやDVD-RWは、TVのエアチェックなどに利用されることを考えると、オーサリングなどはありえず、柔軟な記録操作が要求されます。この辺りが、「ビデオ規格」と「ビデオレコーディング規格」に分かれている理由です。
その中で、Appleはどんな選択をしてきたかを次に見てみましょう。
歴代Macへの搭載ドライブをまとめてみました。
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DVD-Rドライブ (DVD-R for General) |
2001年初頭発売のPowerMac
G4 733MHzモデルのみ |
民生用DVD
Videoの作成。業務用(マスタリング用途)は使用不可。 DVD Videoの再生可。 DVD-RAM不可。 CD-ROM可。CD-R記録可。 |
パソコン初 |
DVD-RAMドライブ | 一世代前のPowerMac G4のハイエンドモデルまたはBTO | PC Dataのストレージ。 家庭用DVD Video Player(ただしDVD-RAM対応機種のみ)で再生可能なDVD Video(もどき)は作成可能。 DVD Videoの再生。 |
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DVD-ROMドライブ | 一世代前のPowerMac
G4の一般モデル、一世代前のiMac DV,SEモデル(最下位機種はCD-ROMドライブ)、 PowerBook G3 (FireWire)、 1世代前のCubeなど。 |
パソコン用のDVD-ROMの再生。 DVD Videoの再生。 |
DVD Videoの再生は、正直なところG3だとかなりつらい。 |
CD-R/RWドライブ | 2001年初頭発売のPowerMac G4、iMac、Cubeなど。 | DVD Videoの再生はできない。 CD-RW/DVD-ROM双方が再生可能な、"コンボ"ドライブを搭載して欲しかった。 |
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CD-ROMドライブ | その他のMac |
こうしてみると、こちらも百花繚乱、魑魅魍魎、複雑怪奇。よくわかりません。
DVD-Rドライブとは、多目的に使用するためのドライブではありません。結局のところ、DVD Videoを作成するためだけのものといってよいです。こうして作成したDVD-Rディスクは、家庭用DVD Videoプレーヤーの大半やPlay Station 2などのゲーム機、DVD-ROMドライブやDVD-RAMドライブなどを搭載したパソコンなどで再生可能なメディアとなります。
ただし、今後普及するにつれ「相性」問題が顕在化してくるだろうなあ、とも思いますが(笑)。
また、PowerMac G4/733(Digital Audio)に搭載されているDVD-Rドライブは、DVD-R for Generalなので、業務用途でのマスタリング用途は使用できません。
これまで、市販DVD Videoを作成するケースでは、
- DLTテープなどにイメージファイルの形でデータ納品しプレスしてもらうか、
- 業務用DVD-Rドライブを使ってDVD-R for Authoringを焼きこれを複製(Duplicate)するか
(ただし一般的ではない)、などの方法がありました。DVD-R for Authoringの場合Dup可能なのでマスターとすることができるのですが、一般普及用であるDVD-R for Generalの場合、著作権保護の意味からDupができないようにコピー防止措置が採られているのです。つまり、PowerMac G4/733(Digital Audio)で市販のDVD Videoを複製することはできません(笑)。
こうしてみると、今回搭載されたDVD-R for Generalドライブは、(DVD Videoを作ろうなんて思わない)一般ユーザ向けでもなければ、DVD Video制作を生業にしているプロの方向けのものでもありません。「DVD Videoに興味を持っており」且つ「アマチュア」向けのものと考えざるを得ません。こういうユーザって、まさに、我々MacDTVな人たち(笑)のことを指していますが、こんなユーザ層ってどれだけいるのでしょうか。
ハイエンドユーザ向けなの??
DVD-R for Generalはオーサリングマスターにならないわけですから、DVD-R for Generalは真の意味でプロ向けではあり得ません。もちろん、試し焼き、というのには便利ですけどね。すべてが大丈夫、というような夢を見せるのは危険です
今年のCreators Portfolioを見てもわかるとおり、アップルは「これまでWebやデザインをしていたプロユーザをDVD Video制作に引き込みたい」という意図がありありです。でもそれにしては、DVD-R for Generalドライブというのはあとでだまされた、ってことにはならないのでしょうか(笑)。現実に、(MPEG-2エンコードやオーサリングのための作業時間をのぞいたとしても)真に「1枚焼くための時間」ですら1時間ちょっと掛かるわけですから、例えば、スモールビジネスにおいて「展示会で数十枚配布する」なんて用途に、内蔵DVD-Rドライブを使えるわけがありません、マシンを占有して数日間ぶっつづけで焼くことになりかねませんから。ま、数的にはせいぜい、アマチュア野球チームのメンバーに合宿DVDを配るくらいが限度でしょうか(笑)。これ以上の枚数が必要なら、現実にはプレスを依頼するしかないわけです。
昨年も、こういったスモールビジネスをターゲットにして、「これまでWebやデザインをしていたプロユーザ」に対して「今後はDTVはいかがでしょうか」という手口(笑)でFinal Cut Proを売っていたのですが、「じゃあ、それで編集した作品でどうやって商売する(商売に結びつける)わけ??」という疑問には答えてなかった訳です。今年は、やっとこの疑問に答える形でDVD Videoを提案しているのでしょうが、でも、ちょっとなあ(笑)。
ハイエンドユーザの中には、過去の世代の上位機種に搭載されていた(あるいは自分の意志でBTOで選んだ)DVD-RAMドライブを利用されていた方も少なからずおられると思います。DVD-RAMドライブは、DVD Video作成という点についてはDVD-Rには劣るものの、パソコンの周辺機器としての大容量データストレージという特徴は今も有していますし、BTOの選択肢として用意しておいても良かったのでは。
一般ユーザ向けなの??
iDVDを用意して大々的に宣伝している割に、最上位機種PowerMac G4 733MHzにしか搭載されない、という疑問はさておき(笑)。一般ユーザ向けでないなら、なぜ(DVD-R自体が普及していない)この時期にiDVDを大々的に開発したのか??良く判りませんからね。
さらに判らないことは、PowerMac G4 733MHzでDVD Videoを作成したとして、現行Macの製品ラインアップを見まわしても、CD-R/RWドライブを搭載したiMac、Cube、PowerMac G4ではDVD Videoを再生することができないわけです。DVD-ROMドライブを搭載していた一世代前のiMac、Cube、PowerMac G4では再生可能だったのに。
この辺にも、なんら戦略性を感じません。自社の最新ラインナップモデルでさえ、せっかく作ったDVD Videoを再生できるか判らない、という混沌とした状況を自ら作り出しています。新製品の一般モデルには、単なるCD-R/RWドライブでなく、CD-RW/DVD-ROM双方が再生可能な"コンボ"ドライブを搭載して欲しかったとも思いますし(コスト的に難しいのでしょうが)、iDVDで一般ユーザにDVD Videoをアッピールするのは、今年後半とされるDVD Multiドライブ(DVD-RWの記録・再生機能を取り入れたDVD-RAMドライブ)の登場を待つとか、一般モデルにCD-RW/DVD-ROMコンボドライブが搭載される時期まで待ってもよかったかもしれません。
現実的には、一気にDVD VideoでなくってVideoCDの方が現実的だと思うのですが、VideoCDが普及しているのは主にアジア圏で、米国ではほとんど知られていませんので、VideoCDについてはAppleでは認知はなかったのかもしれませんね。それに、さすがに"Apple"のプロダクトとしては、VideoCDでは夢が無さすぎ気もします。
いつもながら、Appleはユーザに言われ放題(笑)で、好き勝手いっているわたしからしてもかわいそうな気もします。まあ、それだけユーザの要望が熱い、ということで勘弁していただくとして。
Macの生きる道は、デジタルクリエーションにしか無いわけで、
- 非パソコンでできることは今後PDAなり携帯電話なりのデバイスに奪われてゆくでしょうし、
- パソコンでしかできないことで一般事務的な用途では、Windowsの独壇場となっている
という意味です。デジタルクリエーションの中で有望な分野にDTVが相当することは間違いありません。また、iMovieやFinal Cut ProでDTVの編集ソリューションは用意されていますから、延長線上として、作品を配布可能な形にまとめるという意味でのDVD、というのも頷けることです。また、パソコンのリソースを食いつぶす(HDD容量を食う、CPUパワーを要求する)という点でも、次の新機種を買ってくれることにつながるわけで、商売としてもおいしいし(笑)。
でも、一方で、現在のところ、DVD戦略は混乱しています。そこで...。
iDVDはiMovieユーザに無償配布しよう。
一般ユーザのなかで、DVD Videoに飛びつきそうなユーザ層と言えば、当然、iMovieユーザです。こういった方に、とりあえずiDVDを先行無償配布して、Mac上だけでのDVD作成操作までは現時点でも楽しめるようにします。もちろん、DVD-Rドライブがないわけですから、DVD-R焼きまではできません。
そうすると、次にはどうしてもDVD-Rドライブが欲しくなりますので、商売としておいしい(笑)ことになります。購買意欲をあおるだけあおる訳です。
すでに、iDVDが完成した以上、無償配布は可能ですよね。
内蔵ドライブには、標準でCD-RW/DVD-ROMコンボドライブを採用しよう
Burnを売りにする以上、CD-R/RWドライブの搭載は必須です。かといって、DVD Videoの再生のためには、DVD-ROMドライブでなくてはなりません。従って、標準でCD-RW/DVD-ROMコンボドライブを採用する必要があります(し、現実に、次期モデルチェンジではこうなってゆくでしょう。今のところ、CD-RW/DVD-ROMコンボドライブはコストがネックになっているだけだとおもいます)。そういう意味で、現行マシンはDVDに関しては暫定的、といえなくもありません。じゃあ、現行ラインナップのマシンを買ったユーザはどうすればいいの、というと...。
Apple純正外付けドライブを用意しよう
内蔵ドライブには標準でCD-RW/DVD-ROMコンボドライブを採用したうえで、純正外付けドライブとして、DVD-ROMドライブ、DVD-Rドライブ、DVD-RAMドライブを用意すれば話しは簡単なんですが、夢がなさ過ぎますかねえ。All in one好きなJobsが納得しないでしょうか(笑)。
でもね、DVD-R for Genaralやfor Authoringといった選択肢がないと、業務ユーザの方も混乱してしまうでしょうし、また、外付けの選択肢を用意することで、現行のCDR/RWドライブ搭載機ユーザにとっても、DVD Video再生のための救済策にもなります。
周辺機器メーカにまかせれば良い、という考えもありますが、Appleデザインの純正品を用意するなら、Appleブランドとして商売として成り立つでしょうし、なによりもユーザの安心感もあるでしょう。
AppleのDVD戦略。みなさんはどうお感じになるでしょうか。
私としては、まさに「DVD Videoに興味を持っており」且つ「アマチュア」なヒトの典型なので、すでにPowerMac G4 733を注文してしまいましたが(笑)。まあ、いつもどおりのオチで恐縮です。
でも、確かに、533DualにDVD-Rドライブが付いているならかなり迷ってしまうでしょうし、ほんとは、733Dualなどが出たとき(2001年夏のMac World Expo NYか??)が買い時の本命なのでしょうが。PowerMac G4 733を注文したものの、すっきりはしませんがね。
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Yasushi SATO |